【元保健所職員のつぶやき＃1】甲府市における無許可業種によるノロウイルス食中毒事件について、「飲食店営業」と「菓子製造業」の違いとは
- モトヒロ
- 2023年12月19日
- 読了時間: 4分
更新日：2024年1月14日
こんにちは、元保健所職員で薬剤師のモトヒロです。
今日は最近発表のあった食中毒事件で、私が感じたことを記事にしてみました。
この記事を読むことで「飲食店営業」と「菓子製造業」の違いについての理解が深まります。今後、同許可の取得を考えている方は是非、ご参考にしていただけると幸いです。
1.事件について
甲府市保健所は12月16日、同市羽黒町の食品等事業者が同月12日に提供した弁当が原因のノロウイルスによる集団食中毒が発生したと発表した。
保健所によると、16日までに23人が下痢や吐き気など食中毒の症状を訴え、患者の便や同店の施設内からノロウイルスが検出された。患者らには他に接点がないことから、店が提供した弁当が原因と判断した。
また、同店の営業者は菓子製造業の許可を得てパンを販売していたものの、弁当製造に必要な飲食店営業許可を得ていなかったことも判明し、食品衛生法に基づき営業を行わないよう命じた。
2.元食品衛生監視員（私）が勝手に経緯を創造
ノロウイルスについてはこの間の記事でお説明したので、そちらを見ていただけると嬉しいです。
今回は、「何故、無許可営業の食中毒が発生したのか⁉」について考察したいと思います。
当該施設の許可上の名称は「天然酵母パン〇〇〇〇」と明記されていますが、ニュースの記事当を拝見すると「〇〇〇〇ランチ」という記載になっています。
この内容から、菓子製造業から飲食店営業への許可変更、もしくは飲食店営業の追加を検討してたのか。それとも、菓子製造業でお弁当が作れると思っていたのか。
謎は深まりますが、無許可で製造していたのは間違いなさそうです。
さらに勝手に想像を膨らませると、令和３年６月の食品衛生法の改正前のパン屋さんは、「飲食店営業」と「菓子製造業」の両方を取得している施設がほとんどでした。（自治体によって若干の取得条件は違うとは思いますが…ほぼほぼ両方持っていたんじゃないかな…（自信無し））
当該施設者（2022年に新規菓子製造業の許可を取得（厚生労働省オープンデータより））が、法改正以前の施設と同じことができると勘違いしてたのかもしれませんね。
3.「飲食店営業」と「菓子製造業」の違い
「飲食店営業」と「菓子製造業」の違いについて解説しますと
「飲食店営業」とは、食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業をいう。飲食店営業の対象となる｢調理｣とは、その場で客に飲食させるか、又は、短期間のうちに消費されることを前提として、一応摂食しうる状態に近くなった食品を変形したり他の食品を附加したり、あるいは調味を加えたりなどして飲食に最も適するように食品を加工成形することをいうこと。短期間のうちに消費されることの判断基準としては、調理した者から消費者に直接販売されるか又は食品表示法上、表示義務が免除される対面販売であることなどが想定される。
「菓子製造業」とは、社会通念上菓子の完成品とされる食品を製造する営業をいい、いわゆる菓子種の製造業は含まれないこと。 菓子製造業の許可を受けた施設で、客が購入した菓子やパンに飲料を添えて施設内で提供する場合、飲食店営業の許可を要しないこと。 また、菓子製造業の許可を受けた施設で調理パンを製造する場合、そうざい製造業又は飲食店営業の許可を要しないこと。
厚生労働省の通知の一部を抜粋しましたが、よりざっくり説明しますと…
「飲食店営業」は、店内で提供する食品は基本何を提供しても問題ない。短期間で消費される弁当を対面販売等するのも問題ない※1。（※1 弁当製造を「飲食店営業」の範囲外とし、「そうざい製造業」が必要であると指導する保健所もあります。念のための、管轄の保健所には確認するように。）
たとえば、自家製ハムを道の駅に卸すとなると、食肉製品製造業が必要だけど、飲食店営業の店舗内なら自家製ハムを提供するのは問題ない。
「菓子製造業」は、調理パン（※2）や菓子パンやケーキ等を店内やスーパー等で販売することができる。店内で製造した菓子をコーヒー等と一緒に提供することができる。（※2 令和３年５月まで調理パンは飲食店営業の範囲とされていました。）
4.最後に
以上が、「飲食店営業」と「菓子製造業」の違いについての解説でした。
無許可営業の食中毒事件については、体調不良者の皆さんが１日も早く回復することを願っております。また、当該施設者につきましても、慌ただしい中だと思いますが、今後の感染対策の徹底にご尽力いただければと思っております。
Comments