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【東京都マフィン自主回収事例に学ぶ】「腐敗・変敗」と「食中毒」の違いについて~

更新日:2024年1月14日

こんにちは、元保健所職員で薬剤師のモトヒロです。

このブログでは食品の安全性や衛生管理に関する話題を取り上げています。

今回は、都内のイベント会場で2023年11月、販売されたマフィンを食べた複数の客が腹痛や嘔吐の症状を訴えた問題について、根本的な原因の可能性のある、「腐敗・変敗」について元保健所職員の視点から解説します。




1.事件の経緯

11月11日と12日に東京ビッグサイトで開催されたイベントで、ある菓子店が販売したマフィンを食べた人たちが、腹痛や嘔吐などの体調不良を訴えるという事態が発生しました。東京ビッグサイトで開催されたイベントで、納豆臭や糸引く栗などの変わった味のマフィンを販売した菓子店が発端となっています。このマフィンは、消費期限が当日までとなっていましたが、実際には冷凍保存されていたものを解凍(室内での常温解答という記事もありましたね…)して販売していたことが判明しました。また、一部のマフィンにはカビが生えているものもあったという報告もあります。SNS上では、マフィンの臭いや見た目に異常があったという投稿もありました。この事件は、食中毒の疑いがあるとして、東京都の目黒区保健所が調査に乗り出しました。

このマフィンを食べた客の中には、腹痛や嘔吐などの食中毒のような症状を訴える人が多数出ました。しかし、製造・販売した菓子店を所管する目黒区保健所は、マフィンから食中毒の原因となる細菌が検出されなかったことから、店に対する行政処分を見送ると発表しました。



2.保健所の見解

では、なぜマフィンを食べた人たちは体調不良になったのでしょうか?

保健所は、以下のような可能性を挙げています。

- マフィン以外に食べたものや飲んだものが原因だった

- マフィンに含まれる添加物や香料などがアレルギー反応や不快感を引き起こした

- マフィンの臭いや見た目が心理的な影響を与えた

- マフィン自体に問題はなかったが、個人差や体質によって消化不良や胃腸障害を起こした

これに対して、食品衛生法や消費者契約法などの専門家は、保健所の判断に疑問を呈しました。細菌が検出されなかったとしても、マフィンに含まれる添加物や保存料が体調不良の原因になった可能性もあると指摘しました。また、消費期限や保存方法に関する表示が不適切だったことも問題視しました。



3.「腐敗・変敗」と「食中毒」

今回の焦点は、「食中毒」ではなく「腐敗」もしくは「変敗」による事故の可能性が極めて高いということです。

「腐敗・変敗」と「食中毒」についておさらいしますと


「腐敗」とは、食品に含まれるタンパク質や脂質などの有機物が、細菌や酵素の作用によって分解されることです。腐敗した食品は、悪臭や変色などの外観的な変化を伴います。腐敗した食品を食べると、消化器系の不快感や下痢などの症状が起こる可能性があります。


「変敗」とは、食品に含まれる水分や糖分などの無機物が、細菌や酵母の作用によって発酵や酸化されることです。変敗した食品は、酸味や苦味などの味や香りの変化を伴います。変敗した食品を食べると、胃腸の不調などの症状が起こる可能性があります。


「食中毒」とは、食品に含まれる細菌やウイルス、寄生虫などの病原体やその毒素によって引き起こされる感染症です。食中毒になると、発熱や嘔吐、腹痛などの重篤な症状が起こります。


「腐敗・変敗」については、食中毒事件のような行政処分になることはなく、今回のように改善措置等を踏まえた行政指導で終わるのが食品衛生法上の取り扱いかと思います。

ですが、今回の事件は、自主回収や返金対応等の食中毒事件と同レベルの対応に至っており、改善策についても注目されています。




4.最後に

いずれにしても、マフィンを食べた人たちにとっては、とても不快な経験だったと思います。菓子店も、今後はマフィンの品質管理や衛生管理に気をつける必要があるでしょう。消費者としては、食べ物の安全性や信頼性について、常に注意することが大切ですね。




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