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【特集】カンピロバクター食中毒の危険性と予防法

更新日:2024年1月14日



こんにちは、元保健所職員で薬剤師のモトヒロです。


今日はカンピロバクター食中毒の危険性と予防法についてお話ししたいと思います。


この記事を読むことでカンピロバクター食中毒についての理解が深まります。正しい知識を身につけ、自身の身は自分で守れるようになりましょう。



1.カンピロバクターとは

カンピロバクター(campylobacteriosis)は、鶏肉や牛レバーなどの生食や加熱不十分な食品によって感染する細菌です。カンピロバクター食中毒は、日本で最も多く発生している細菌性食中毒の一つで、毎年数百人程度の患者が発生しています。(毎年、食中毒事件数の上位3位以内に入っています。)


食中毒発生状況※


カンピロバクターのみ事件数(総事件数)

カンピロバクターのみ患者数(総患者数)

令和4年

185件(962件)

822件(6856件)

令和3年

154件(717件)

764件(11080件)

令和2年

182件(887件)

901件(14613件)

(※厚生労働省 食中毒統計資料より)



カンピロバクターに感染すると、下痢、腹痛、発熱、頭痛などの症状が出ます。ほとんどの場合は自然に治癒しますが、重症化したり、後遺症(ギランバレー症候群※)として手足の麻痺や顔面神経麻痺を引き起こすこともあります。

(※:ギランバレー症候群は、末梢神経障害の一種で、筋肉の弱さや麻痺、感覚異常などが現れる疾患で、手足の力が入りにくくなり顔や体の筋肉が麻痺します。ギランバレー症候群に関する訴訟については、カンピロバクターによる食中毒が原因で発症したとして、労働災害補償保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付の請求をした事例があります。)




2.原因食は

カンピロバクター食中毒の原因となる食品は、主に鶏肉です。鶏肉は、鶏の腸管内にいるカンピロバクターに汚染されやすく、食鳥処理の過程(権利の問題で添付できていませんが、「食鳥処理 工程」で画像検索していただけると、汚染リスクを理解していただけると思います。)で肉や内臓に付着することがあります。また、調理中に包丁やまな板などの器具を介して他の食品にも付着することがあります。カンピロバクターは、数百個程度と少ない菌量で感染することができるため、生食や加熱不十分な食品を食べると高い確率で感染します。

食品安全委員会は、2009年にカンピロバクターに関するリスク評価を行い、鶏肉の生食をする人が年間平均3.42回、生食をしない人は0.364回感染すると推定しました。また、鶏肉の生食をする人が1食を食べた時に感染する確率は、家庭で1.97%、飲食店で5.36%であることがわかりました。これらの結果から、鶏肉の生食がカンピロバクター食中毒の主因である可能性が高いことが示されました。




3.鶏の生食の代表格「鶏のたたき」

鶏のたたきは、表面を炙って食べる方法を一般的に指します。中まで完全に火を通すというわけではありません。表面を軽く炙って、若干焦げ目が付く程度に焼くケースが多くなっています。そして、炙った鶏のたたきに黒酢や醤油に漬けて食べるのが一般的です。香辛料や薬味を加えて食べるのも主流です。このように調理に至っても、細心の注意が必要な食品であることは間違いありません。それに、先ほどもお伝えしたように、食鳥処理の問題もあり生食のリスクをしっかり理解する必要があります。(食文化や生食用の鶏肉の流通について等、他にも問題が山積みですが、専門的な話になるのでまたの機会に…)





4.最後に

カンピロバクター食中毒を予防するためには、以下の点に注意する必要があります。

- 鶏肉は、中心部まで火が通るように十分に加熱すること。生食や半生食は避けること。(予防として考えたいのなら、生食は食べないに越したことはないです!!)

- 鶏肉を扱った後は、手や器具をよく洗うこと。鶏肉と他の食品を別々の器具で扱うこと。

- 鶏肉を冷蔵庫で保存する場合は、他の食品に汁が垂れないようにすること。


カンピロバクター食中毒は、食品の取り扱いや調理方法によっては防ぐことができます。食品の安全を確保するために、正しい知識と注意を持って食生活を楽しみましょう。




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